某日、既に陸軍大将となっていた西郷隆盛は、役所を出ようとして、自分の履き物をお付きの男がどこにしまったのか見当たらなかった。
仕方なく西郷は足袋のまま、外に出たのだが、この時タイミング悪く雨が降り出したのだという。
しかしそれを一向気にする事も無く歩き出して庁門にさしかかった際、守衛の者がその風体を怪しんで声をかけた。
この際、西郷はそのままに事実関係を伝えたのだが、守衛は俄(ニワカ)にはその事を信じなかった。
其れで仕方なく其処に立ち止まっているところへ、右大臣岩倉具視が馬車で通りかかった。
そこで事情を理解した岩倉卿が守衛に向かって「この人は西郷大将である」と告げたところ、守衛は大いに驚き陳謝したのだそうだ。
しかるに西郷隆盛は、怒るどころか守衛が職務に忠実である事を褒め、岩倉卿の馬車に同乗して退出したのだという。
「このハゲェ~~~ッ!」との格差。
百数十年でこれだけ為政者サイドの人間が変わったと云う事だろうか?
因みに画像は嘗て宮崎を訪れた際、途中立ち寄ったひっそりした何かの記念館だかなんだかの中庭で見かけた、西郷が西南の役で敗戦濃厚となった際、軍服を焼却した場所。
なんとも言えない切なさを感じて写真を撮っておいたもの。