その男

その男の高校時代を知る面々の中には「ヤクザにならなかったのが不思議」と思う者も居るようだ。
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私とは幼稚園から中学まで一緒で、中学生の時、放課後彼と二人で他の中学へ喧嘩相手を探しに出かけたことがある(^^ゞ

高校は別々になったが、確か一度だけ彼の家を訪れたことがあった。
其れも亦喧嘩話題で立ち寄ったのだった(^^ゞ

その彼が昨日ひょっこり尋ねてきてくれた。
3時間ばかり話をしながら、彼の高校卒業後の人生について聞いた。

彼は高校卒業後二年ばかり経ったとき・・このままではろくな仕事にも就けずろくな人生に成らないと思い立ち、一念発起して「冶金」の勉強を二年ばかりしたのだそうである。
そして某大手企業に勤めて、嘱託を含めて65歳まで勤務し続けたのだそうだ。
変な表現だが、高校時代喧嘩で一度は天下を取ったような男が良く勤まったものだと思う。

「嫌みな上司にぶち切れるというようなことは無かったか?」と聞く私に「ぶち切れたら何もかもおしまいになると思って耐えた」のだと答える。
そんな事が繰り返し有り、サラリーマンにありがちな「酒で憂さを晴らす」局面も良くあったのだそうだ。

しかしその我慢の人生の中で、彼は現在篠山市の実家の他に大阪に二軒の借家を持っているのだそうだ。
「当時は集団就職で遠くから来ている同僚が、故郷に錦を飾る為にとにかく大阪に持ち家をと云うのに倣って」なのだそうだが、正直な所大したものだと思う。

怒りも何もかも、彼はぐっと飲み込んで、青春以降の人生を送ってきたのだと思う。
そのぐっと飲み込むというのは自らの意思行為である。
世の中には、自らの意思でぐっと飲み込むと云うことが出来ずに、ぶち切れるか若しくは押しつぶされるかしている人を見ることが少なくない。

そういう意味では、意志力で飲み込んできた彼には、逆に昔の面影がある。
人間としての輪郭を潰されなかったとでも言えば良いだろうか。
「私から見たら・・若い頃は相当ヤンチャをしてきたのだろう・・と云うのが十分窺い知れる」と伝えたら、「あははそんな事は無いだろう」と笑いながら答える。

65歳を過ぎて「三味線」を習っているのだそうだ。
彼には其れをするだけの或る意味で余力があったのだ。
満たされた老年を過ごしてくれよ!と心からそう思う。

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by tennkozann | 2017-11-06 09:49 | Comments(0)